深泥ヶ池


1969年10月6日深夜。1台のタクシーが京大病院から一人の客を乗せた。年の頃は四十前後。肩まで伸びた洗い髪が印象的な、陰にこもった感じのする女性であった。客は深泥ヶ池と行き先を告げた。しかしその池のそばまで来た時、後部座席の客は消えており、慌てて警察を呼んだが、結局転落した形跡も見あたらなかった。その日京大病院で亡くなった、深泥ヶ池辺りに住んでいた女性患者がいたそうである。 穏やかな昼の深泥池

 この「タクシー伝説」発祥の地といわれる深泥池(みどろがいけ)は、地下鉄北山駅から北へ徒歩10分。閑静な住宅地のそばにある。「タクシー伝説」のほかにも「水面に女性が立っていた」「白い影が池の周りを徘徊していた」など怪談が絶えない。そして深泥ヶ池周辺には、古くからの言い伝えがある。その名の由来であるが、行基がこの池から『弥勒菩薩像』を発見したことから始まるらしい。この地はちょうど洛中から鞍馬街道へ向かう分岐点であり、まさに人里から異界への境界線上であるという認識があったようである。そして“鬼が出てくる穴”というものが存在していたという。その出現してくる鬼を退治するために、始まったのが『豆まき』であるというのである。 昭和初年頃には【豆塚】なるものがあった言われているが、今ではその所在していた場所すら不明である。一説によると、深泥ヶ池から少し離れたところにある深泥ヶ池貴船神社の境内にそれがあったと言われている。幽霊もさることながら、古来より深泥ヶ池は異界の入り口の役目を果たしていたのかもしれない。


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